[KR]cube
2002年5月24日本当に怖いホラーとは、ありふれた日常の景色の中に、徐々に不気味に忍び寄る黒い影を、巧みに織り交ぜているものである。
それは何気無い、何時もの授業風景だった。
「じゃあ、次は強制振動の方程式。このばね定数Kが……(以下略)」
2質点系振動方程式の説明。
何を隠そう、この式はことある毎に登場するのでお馴染みではあるのだが、此処のとこの引き篭り生活ですっかり忘れ果てていたのと、基本中の基本の数式でも矢張り難しいので、真剣に聴いていた。つもりだった。
……しかし、人間の集中力には、自ずと限界と云うものがある。
「それで、このRより刺激関数が導かれる訳で……」
「剛性マトリックスKが……」
「固有ベクトルRが……」
「Kが……」「Rが……」
K……R……
KR……KR……
♪くるり、ふらり、ふわり、くらり くるり、ふらり、ふわり、くらくらり
俺の頭の中で、何時しか"[KR]cube"Dir en greyが流れ出す。
と、またもやそこで先生の声が。
「それで、コンクリートの場合は……」
……コンクリート?
♪何処までも逃げ回ろうとしている コンクリートの透き間を
ああ、俺の脳内スピーカー(LEFT)から、今度は"Dejavu"LUNA SEAが聞こえて来た(RIGHTスピーカーはDir)。混ざり合う2つの旋律。
此処までは良い。誰しも経験があるだろう。退屈な授業中にお気に入りの音楽が、頭の中で勝手に再生されることなど、日常茶飯事だ。
しかし、次の瞬間、舞台は一気に血塗られる。
……"[KR]cube"の[KR]が「河村隆一」の略だったら、怖いよな。
ついうっかり、そんな妄想をしてしまったから、さあ大変。
俺の脳味噌は、匣と河村隆一の笑顔でいっぱい。
柚木加菜子の如く匣にみつしりと詰まって「ほう」と笑い掛ける、河村隆一。冷蔵庫の扉を開けるとそこに、河村隆一。映画"cube"のトラップの代わりに、河村隆一。俺の部屋(6畳間)の扉をがらっと開けると、部屋一杯に膨張してみつしりと詰まった、河村隆一(しかも何故か頭部のみ)。
それで、扉と同じ大きさくらいに拡大された瞳が、畳一畳分の瞼を動かして、可愛らしく瞬きとかして、俺を見詰めるんだぜ。
怖い。……怖過ぎる。(お前がな)
……俺の、卒業への道は、遠く険しい。
それは何気無い、何時もの授業風景だった。
「じゃあ、次は強制振動の方程式。このばね定数Kが……(以下略)」
2質点系振動方程式の説明。
何を隠そう、この式はことある毎に登場するのでお馴染みではあるのだが、此処のとこの引き篭り生活ですっかり忘れ果てていたのと、基本中の基本の数式でも矢張り難しいので、真剣に聴いていた。つもりだった。
……しかし、人間の集中力には、自ずと限界と云うものがある。
「それで、このRより刺激関数が導かれる訳で……」
「剛性マトリックスKが……」
「固有ベクトルRが……」
「Kが……」「Rが……」
K……R……
KR……KR……
♪くるり、ふらり、ふわり、くらり くるり、ふらり、ふわり、くらくらり
俺の頭の中で、何時しか"[KR]cube"Dir en greyが流れ出す。
と、またもやそこで先生の声が。
「それで、コンクリートの場合は……」
……コンクリート?
♪何処までも逃げ回ろうとしている コンクリートの透き間を
ああ、俺の脳内スピーカー(LEFT)から、今度は"Dejavu"LUNA SEAが聞こえて来た(RIGHTスピーカーはDir)。混ざり合う2つの旋律。
此処までは良い。誰しも経験があるだろう。退屈な授業中にお気に入りの音楽が、頭の中で勝手に再生されることなど、日常茶飯事だ。
しかし、次の瞬間、舞台は一気に血塗られる。
……"[KR]cube"の[KR]が「河村隆一」の略だったら、怖いよな。
ついうっかり、そんな妄想をしてしまったから、さあ大変。
俺の脳味噌は、匣と河村隆一の笑顔でいっぱい。
柚木加菜子の如く匣にみつしりと詰まって「ほう」と笑い掛ける、河村隆一。冷蔵庫の扉を開けるとそこに、河村隆一。映画"cube"のトラップの代わりに、河村隆一。俺の部屋(6畳間)の扉をがらっと開けると、部屋一杯に膨張してみつしりと詰まった、河村隆一(しかも何故か頭部のみ)。
それで、扉と同じ大きさくらいに拡大された瞳が、畳一畳分の瞼を動かして、可愛らしく瞬きとかして、俺を見詰めるんだぜ。
怖い。……怖過ぎる。(お前がな)
……俺の、卒業への道は、遠く険しい。
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