広告業界最前線

それは、何時もの平和な朝だった。……はずだった。
新聞を広げた時に、その広告にさえ出遭わなければ。

「御存じですか、今仏壇がメチャ安なのを」
広告一面に、仏壇の写真とその価格が掲載されている。

何なんだ、この能天気で力強いコピーの数々わっ!?

「壮大なスケール 見応え十分」「大投げ売り大処分」
「他店で100万〜200万位の高級品を廉価でお売りします」
「2000本タタキ売り」
「桁はずれの安値」「広告に偽り無し」
「価格は正に丸ハダカ」「絶対に安いんです」
「まだまだ安くまだ安く、本当に安くします」

此処までは、良い。
何だか知らんが、「安い」と云うことだけは、良く判るだろう。
次のコピーには、多少疑問を感じざるを得ないとしてもだ。

「どれもこれも 真心設計の品ばかり」
「世界遺産 屋久島の屋久杉 天然記念物」
「本物の屋久杉 末代まで残したい 一家の家宝に」

「伐採禁止」

……。伐採禁止?? ……ダメじゃん、それ。
ま、木材だし、伐採してすぐに加工できる訳ではないから、世界遺産に指定される前にでも、伐採したんだろうが。

この広告、目にした瞬間に飛び込んで来る文字が、これだもんな。

「死に物狂い 緊急二千本 大タタキ売り」
「安く売らねば生き残れない」

……しかも1行目から、この調子だ。

「同一品をここより安く売るところがあったらお金はいりません」

「値下げ致します」とか「1円でも安くします」とか最早そう云う次元ではなく、「お金はいりません」と来たか。すげえな。
漢(おとこ)らしいコピーが満載された紙面に、同居人も俺も、不覚にも一瞬言葉を失ってしまったよ。
こんな攻撃的なコピーの数々を考え出す広告代理店も凄いけど、採用したクライアントも凄いよなあ。こんなコピーでも許されるなら、俺なんか1日に500本は軽く思いつくんですけど。何処かの広告代理店で雇ってくれないかな、俺を(笑)。いや、マジで……
とか思っていたら、この仏壇展示会の主催は「株式会社 仏壇安売り屋」
……自社製作広告かも知れない。

おまけに、この広告。
よく見ると仏壇1本の写真ごとに細かい字で「絶対に安いんです」「本当に安いんです」といちいち書いてある。
……もしかして、サブリミナルのつもりか??