最凶の夜。でも数字は微妙に「2」

今のバイト先。
まず、俺が最初に手先として潜入する。適度に仕事をこなし、「誰か周りにバイトできる人がいたら、紹介してよ」と店長に言われる程度には、信頼を得る。そこでウチの同居人を紹介し、まんまと採用される。同居人もまあソツ無く仕事ができる様になり、それなりの信用を得る。そして「サークルの友達で、バイトできる人いない?」と云う店長の言葉に、更に同居人の同級生(俺も直接知っている)と同居人の後輩(こちらは直接面識は無かったが噂で知っていた)を送り込む。同居人の同級生は、某大手チェーン系居酒屋の厨房で長年バイトしていた経験があるだけに、ウチの店でも入店早々頭角を現わした。同居人の後輩の方は、入店直後は多少不安にさせられたものの、最近急成長。今や全員、スタッフとして立派に独り立ちしている。

その御蔭か、この4人が同じ日にシフト被ると云うことは、意外にも今まであり得なかった。まあこの他にもスタッフがいるのだから、当然だが。
本日のシフト。本来ならば俺、同居人の後輩、同居人の同級生＋他のスタッフ2名でこの店は営業されるはずだった。しかし。そのうち1名が体調不良により欠席。そこでこの時間帯を預かる責任者権限で俺が同居人に電話。本来非番であるところを、急遽出勤要請。

……斯くして、役者は揃った。
しかもすっかり忘れていたけど、今日客席にはウチの同居人の同級生にしてウチの同居人の後輩のルームメイト、俺の直接の知人でもある青年が遊びに来ていたのだった。俺と同居人は在籍している学校は違うのだが。
俺の出勤直後には8割がた埋っていた客席も、夜が更けにけり1組帰り2組帰りで、電車が止まる頃には事実上のノーゲス(席に客がいない)状態。

……厭だなあ。身内しかいない店。

この店は今や悪の巣窟だ。
例えるならば、フリーメースンかイルミナティか薔薇十字団と云うところだ。本当は、単なる変わり者のおっさんの集団でしかないのに、ちょっと調子に乗って「秘密結社」なんて名乗ってしまったために、後世のオカルティーな妄想少女に美青年の集う妖しげな悪の組織に勝手に仕立て上げられたりして、憐れみを誘うところが。
ポーカーに例えてみれば、最強の役がロイヤルストレートフラッシュならば、揃い難そうなフォーカード。コレクター魂揺さぶるフォーカード。

同居人の後輩＝クラブ(実力的に下っ端だから)
同居人の同級生＝ダイヤ(虐げられるのが好きらしい)
同居人＝ハート(偉そうだから)
客席の知人＝スペード(その視点は剣の如く鋭い)

俺＝ジョーカー。「切り札」と云うより、寧ろ道化者。別名、愚者。

……それって、ファイブカードで最強じゃん。


こんなウチの店では、ただ今、新規スタッフ募集中です。
貴方も、明るく朗らかに罵詈雑言飛び交う職場で働きませんか??