全生庵 三遊亭円朝「幽霊画」コレクション
2002年8月30日毎年8月に谷中の全生庵では、虫干しを兼ねて幽霊画が一般公開される。
……そんな情報は、以前から得ていた。
しかし当時は遠く離れた地域に棲んでいたため、この方面には疎く、今まで見に行く機会を悉く逸していた。
と云うより、毎年「観に行きたいなあ」とか言いつつ、結局実行できずに8月も終わりを迎えてしまっていたからな。
まあ、来年行けばいーや。
何だか涼しくなって来て、怪談の旬も終わっちゃったみたいだし。
でも、突然、思った。何の脈絡も無く。
……「来年」は、無いかも知れない。
別に余命数ヶ月の不治の病に冒されている訳でも何でも無いが、今日行きそびれると、絶対来年も行き損なう。
だって、行けなかった理由が「暑いから面倒」ってなだけなんだもん。
そして、地球の地軸の傾きが変わらない限り、「涼しい8月」なんてモノは、多分未来永劫あり得ない。
そう思ったら居ても立ってもいられなくなって、残暑の炎天下に飛び出していましたよ。……やればできるじゃないか、俺。
営団地下鉄千代田線千駄木駅からすぐの所に、その寺は在った。
……普通じゃん。
何か「幽霊画所蔵の寺」と聞いて、もっと見るからにオドロオドロしいものを勝手に色々想像していましたが、思っていたよりも全然普通だった。
ってゆーか、なかなか見当たらないと思ったら、見事に通過してたし。
夜だったら別の雰囲気も味わえただろうが。
まずは、三遊亭円朝の墓参りを済ませてから、本堂に向かう。
……もっと大々的にやっているものかと思ったら、本堂内の一室でひっそり公開されていたのね。危なく展示会場見つけられないところだった……
展示スペースは、板張りの10畳程の部屋。
その壁にずらりと幽霊掛け軸が並べられているのは、壮観。
そして拝観料を入口で渡して、そこで言われたのが「ごゆっくり」。
それで係員は去って行った……
……え? 見張ってなくて良いんですか? 良いんですか?
俺が心無い人間だったら、貴重な幽霊画に悪戯するかも知れないよ?
ねえ。見張っててくださいよ。ああ。行かないで。
……ってゆーか、こんな空間に独りで残されたら、
怖いじゃねーかっ!!(泣)
いや、本当勘弁してくださいよ。俺、これでも怖がりなんすよ。
こんな四方八方幽霊に睨まれ、足元の床は踏む度にギシギシ鳴ってるし、戸外の蝉の声と古びた空調設備の稼動する音以外は何も聞こえないし、伝統木造建築特有の木と土壁と埃と黴の匂いが漂ってるし。
……怖い、これは怖い。
これでふと人の気配を感じて振り向いたら、そこには!!
……何て不吉なことは考えず、兎に角「今は昼」と自分に言い聞かす。
しかし。
幽霊画を観始めたら、そんなことはすっかり忘れていたよ。
流石有名コレクション。何処かで目にしたことのある画が多い多い。
有名なものは勿論、無名なものも様々な趣向が凝らしてあり、多寡が幽霊画と雖、ヴァリエーションは豊富ですなあ。
見るからに恐ろしげな恨みの表情を浮かべた画は一瞬怖いんですが。
それよりも一層、寂しげな表情を浮かべた美女の幽霊画は、ひしひしと身に迫る様で尚更趣深い。
……幽霊画を鑑賞すると、つくづく思うね。「女は怖い」。特に美人は。
今回のお目当ては丸山応挙の幽霊画。清楚な美女が翳りと憂いに満ちた表情で、楚々と佇む画は、誰もが(え?)一度は見たことがある逸品。
そして谷文一の「燭台と幽霊」。虚ろな腫れぼったい眼が怖い。
伊藤晴雨の「怪談乳房榎図」の苦悶の形相は物凄いし。
「月に柳図」(光村)は、全然幽霊は描いていないのに、鬼気迫る雰囲気が水際立って素晴らしいです。
……そんな感じで、気づけば2時間程経過。
本日公開されていたのは26幅だけなんですが、噂によると8月の公開期間中に何度か展示する掛け軸が入れ替わるらしいです。
……そんな訳で、見逃した画をフォローするためにカタログ購入。
……建物の外に出れば、陽が翳ったせいか、心無しか少し涼しかった。
残暑厳しい中、一瞬涼を味わった昼下がり。
……そんな情報は、以前から得ていた。
しかし当時は遠く離れた地域に棲んでいたため、この方面には疎く、今まで見に行く機会を悉く逸していた。
と云うより、毎年「観に行きたいなあ」とか言いつつ、結局実行できずに8月も終わりを迎えてしまっていたからな。
まあ、来年行けばいーや。
何だか涼しくなって来て、怪談の旬も終わっちゃったみたいだし。
でも、突然、思った。何の脈絡も無く。
……「来年」は、無いかも知れない。
別に余命数ヶ月の不治の病に冒されている訳でも何でも無いが、今日行きそびれると、絶対来年も行き損なう。
だって、行けなかった理由が「暑いから面倒」ってなだけなんだもん。
そして、地球の地軸の傾きが変わらない限り、「涼しい8月」なんてモノは、多分未来永劫あり得ない。
そう思ったら居ても立ってもいられなくなって、残暑の炎天下に飛び出していましたよ。……やればできるじゃないか、俺。
営団地下鉄千代田線千駄木駅からすぐの所に、その寺は在った。
……普通じゃん。
何か「幽霊画所蔵の寺」と聞いて、もっと見るからにオドロオドロしいものを勝手に色々想像していましたが、思っていたよりも全然普通だった。
ってゆーか、なかなか見当たらないと思ったら、見事に通過してたし。
夜だったら別の雰囲気も味わえただろうが。
まずは、三遊亭円朝の墓参りを済ませてから、本堂に向かう。
……もっと大々的にやっているものかと思ったら、本堂内の一室でひっそり公開されていたのね。危なく展示会場見つけられないところだった……
展示スペースは、板張りの10畳程の部屋。
その壁にずらりと幽霊掛け軸が並べられているのは、壮観。
そして拝観料を入口で渡して、そこで言われたのが「ごゆっくり」。
それで係員は去って行った……
……え? 見張ってなくて良いんですか? 良いんですか?
俺が心無い人間だったら、貴重な幽霊画に悪戯するかも知れないよ?
ねえ。見張っててくださいよ。ああ。行かないで。
……ってゆーか、こんな空間に独りで残されたら、
怖いじゃねーかっ!!(泣)
いや、本当勘弁してくださいよ。俺、これでも怖がりなんすよ。
こんな四方八方幽霊に睨まれ、足元の床は踏む度にギシギシ鳴ってるし、戸外の蝉の声と古びた空調設備の稼動する音以外は何も聞こえないし、伝統木造建築特有の木と土壁と埃と黴の匂いが漂ってるし。
……怖い、これは怖い。
これでふと人の気配を感じて振り向いたら、そこには!!
……何て不吉なことは考えず、兎に角「今は昼」と自分に言い聞かす。
しかし。
幽霊画を観始めたら、そんなことはすっかり忘れていたよ。
流石有名コレクション。何処かで目にしたことのある画が多い多い。
有名なものは勿論、無名なものも様々な趣向が凝らしてあり、多寡が幽霊画と雖、ヴァリエーションは豊富ですなあ。
見るからに恐ろしげな恨みの表情を浮かべた画は一瞬怖いんですが。
それよりも一層、寂しげな表情を浮かべた美女の幽霊画は、ひしひしと身に迫る様で尚更趣深い。
……幽霊画を鑑賞すると、つくづく思うね。「女は怖い」。特に美人は。
今回のお目当ては丸山応挙の幽霊画。清楚な美女が翳りと憂いに満ちた表情で、楚々と佇む画は、誰もが(え?)一度は見たことがある逸品。
そして谷文一の「燭台と幽霊」。虚ろな腫れぼったい眼が怖い。
伊藤晴雨の「怪談乳房榎図」の苦悶の形相は物凄いし。
「月に柳図」(光村)は、全然幽霊は描いていないのに、鬼気迫る雰囲気が水際立って素晴らしいです。
……そんな感じで、気づけば2時間程経過。
本日公開されていたのは26幅だけなんですが、噂によると8月の公開期間中に何度か展示する掛け軸が入れ替わるらしいです。
……そんな訳で、見逃した画をフォローするためにカタログ購入。
……建物の外に出れば、陽が翳ったせいか、心無しか少し涼しかった。
残暑厳しい中、一瞬涼を味わった昼下がり。
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